iPS細胞とは、皮膚細胞などから人工的に作られた万能細胞のことをいいます。万能細胞からは、ヒトの身体のあらゆる部分を作製することが可能になります。
2007年11月に、京都大学の山中伸弥教授の研究チームと、アメリカのウィスコンシン大学の研究チームが、世界で初めてiPS細胞を作ることに成功したと発表しました。
それまで万能細胞といえばES細胞と呼ばれる胚性幹細胞のことでしたが、ES細胞は赤ちゃんになるヒトの受精卵から作るため倫理的な問題が指摘されていました。また、ES細胞から作られた移植用の細胞や組織は、拒絶反応を起こす可能性がありました。
その点iPS細胞は、受精卵ではなく皮膚細胞のように採取に差し支えない体細胞を使って作製できるので、受精卵を破壊する必要がなく、倫理的な問題はクリアされています。
またiPS細胞は患者自身の細胞から作製することができ、分化した組織や臓器を移植した場合、拒絶反応が起こらないと考えられます。そのため、病気や事故で失った組織や臓器を人工的に作り移植する再生医療への活用が期待されています。
iPS細胞は神経や心筋・肝臓・膵臓などの患部の細胞に分化させられるので、その患部の細胞の状態や機能がどのように変化するかを研究することができます。このことにより、今までわからなかった病気の原因が解明できる可能性があります。
山中教授がiPS細胞作製の成功を発表して以来、政府はiPS細胞の研究を推進しています。
文化科学省により「iPS細胞等研究ネットワーク」が構築されており、経済産業省や厚生労働省も研究を支援する施策をとっています。 |