♦地球温暖化
二酸化炭素やメタンといった気体は、赤外線を吸収し、地球に布団をかぶせたような状態にして熱をこもらせる働きがあります。このような気体を、温室効果ガスといいます。産業革命以降、世界の平均気温は約1℃上昇しており、これは温室効果ガスの濃度が増えたためだといわれています。今後、温室効果ガスの濃度がさらに増えると、2100年には世界の平均気温が0.3℃〜4.8℃も上昇すると予測されています。
地球温暖化に対する対策を進めるためには、温室効果ガスの排出量を削減することが必要となります。温室効果ガスのうち最も排出量が多いのは二酸化炭素です。従って、二酸化炭素の排出量を削減できる規制策が、地球温暖化対策に有効といえます。
♦温室効果ガス排出の現状
2015年に採択されたパリ協定を踏まえて日本では、温室効果ガスの排出量を2013年度比で、2030年度には26%削減を、2050年には80%削減を目標として掲げました。
温室効果ガスの排出量を見ると、工場などの産業部門や運輸部門では減少傾向にあり、10年間で約10%減少しています。一方で商業・サービスなどの部門や家庭部門については、増加傾向にあります。エネルギー転換部門は、横ばいで推移していますが、石炭火力発電所の新設・増設計画が多くあり、これらが全て稼働すると、2030年度の削減目標を大幅に超過する可能性があります。昨年12月に開催されたCOP25では、国連のグテーレス事務総長から、「世界いくつかの地域では、石炭火力発電所が今でも多く計画・建設されている」と指摘されました。これに対し当時の小泉環境大臣は、「石炭火力発電に関する新たな政策をこの場で共有することは残念ながらできない」と発言し、日本の姿勢に対して批判が集まりました。
♦カーボンプライシングとは
炭素の排出量に価格付けを行うことを、カーボンプライシングといいます。排出される炭素に対して、トン当たりの価格が付されるもので、「炭素税」や「排出量取引制度」などがあります。
今では無料で排出していた温室効果ガスの費用が見える化することから、明示的カーボンプライシングということもあります。一方、石炭石油税や軽油引取税などのエネルギー課税や、規制や基準を順守するためにかかるコストなどを暗示的炭素価格といいます。
明示的カーボンプライシングを行うことで、温室効果ガスを排出することによるコストが明確になるので、排出削減対策にかかる費用とカーボンプライシングによる負担を比較しながら、排出量を削減することが可能になります。
♦各国の取り組み
2017年現在、日本を含む42の国と25の地方政府が、何らかの明示的カーボンプライシング施策を導入・検討しています。
フィンランドでは、1990年に世界初の炭素税を導入しました。2011年には暖房用燃料と輸送用燃料の税率を分けるなど、エネルギー税制改革を実施し、現在では導入当時の約50倍の税率になっています。炭素税が導入された1990年と比べて、2014年の二酸化炭素排出量は16%減少しています。
日本では、2012年10月から地球温暖化対策のための課税の特例として、全化石燃料に対して289円/tco2の課税を行いました。従来の石油石炭税と合わせると、原油・石油製品では約1,000円課税されています。しかし諸外国に比べると、まだまだ低い水準にあります。
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