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ワンポイント
印紙税の軽減措置拡充と
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・技術と追いかけっこ
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編集後記
 〜時泥棒〜



業績31の原理

 経営一番 NO.167  2009年1月

〜 「耕さない田んぼ」が日本を救う 〜

 作物を作るには土を耕すことが当然だ、と私たちは思ってきた。しかし、耕すことなく、無農薬でおいしい米がたくさん取れる農法がある。

■いいことずくめの「非常識」な水田

 畦を歩く。侵入者に驚いた無数のカエルが右へ左へと飛び込む。水の中ではメダカが群れをなして泳ぎ回り、タニシがトロトロした土の上でくつろいでいる……。

 驚くほど生き物の多いこの田んぼでは、21年前から耕さない農法「不耕起栽培」を、8年前からは冬の間も水を溜めておく「冬期湛水」を続けている。「耕す」の語源が「田返す」であるように、農業は「耕すもの」のはずだ。耕さないことのメリットを、この農法の考案者で、日本不耕起栽培普及会の会長を務める岩澤信夫氏に聞いた。

 「まず第一に稲が丈夫になります。耕さないため、土はコンクリートのように硬い。そこに根を張ろうとして稲はストレスを受け、エチレンというホルモンを出す。それで稲の体質転換が起きる。根が太くなり、分枝根という細やかな根も発達する。株が開いて茎が太く、倒伏しにくくなる。冷害にも病気にも強い稲に育つのです」

 (稲の野生化)によって本来の力を引き出し、しかも収穫後に水を溜めて、生き物の連鎖を断ち切らない。「通常、稲刈りの後は田んぼの水を抜いて土を乾かしますが、冬の間も水を溜めておくことでイトミミズや微生物が盛んに繁殖します。この田んぼには1反で約1,500匹ものイトミミズがいますが、彼らのフンや死骸が積もってとろっとした土『トロトロ層』ができる。この層は天然の肥料となるうえ、土中の種子を覆うため、雑草の発芽も抑えられる仕組みです」

 イトミミズのエサとして1反当たり50キログラムの米ぬかを投入するが、化学肥料等は一切なし。トロトロ層のおかげで米の味はいい。前の年の古株を分解する過程で発生するサヤミドロなどの藻類のおかげで、水中の酸素もプランクトンも豊富だ。たとえ害虫が発生していてもそれを食する天敵も増えるから、大きな被害にはならないなど、生き物をうまく活かした理想的な栽培である。岩澤氏は「何にも使わずに、自然の恵みで米をもらっている『やらずぶったくり』の農法なのです」と笑う。

 

■冷害で見出した 耕さない農法

 岩澤氏が不耕起栽培を見出したきっかけは、1980年に東北地方で起きた冷害だ。現地で視察して、ところどころに稲が穂を垂れた田んぼがあることに気づく。当時も今も田植えには「稚苗」という葉が2枚半の幼い苗を植えるが、冷害を免れた田んぼは、お年寄りが昔ながらの方法で葉っぱが5枚になるまで育てた「成苗」を植えていたのだ。さらに、オーストリアに「耕さない稲作」があることを知る。そこで各地の知り合いの農家に、トラクターが入れず土が硬い田んぼの四隅に成苗を植えてもらった。結果は想像以上。同じ田んぼの稲よりはるかに立派に育ったのだ。 

 耕さずに稲作ができれば農家は楽だろう。春起こしや代掻きなど少なくとも年に5回は耕すから、その時間も労力もトラクターの燃料費もかからない。冬期湛水で雑草が劇的に減ることもわかった。不耕起栽培用の田植機の開発には手間取ったが、農機メーカーと協力して製品化し、今では普通の田植機の1割高で購入できる。

 
■普及が進まない意外な理由

 実は、不耕起栽培は地球環境にもやさしい。国土の約7%を占める田んぼからは、温室効果ガスの一つであるメタンガスが発生するが、耕さないことで空中に放出する温暖化ガスは激減する。また、この田んぼは水質の浄化力が高いので、緩速濾過装置にもなり得る。飲料水の供給源として日本一汚染度の高い印旛沼では農業排水が問題となっているが、周辺の田んぼ全てが冬期湛水・不耕起栽培に切り替えて水循環の仕組みを整えれば、「沼の水を年に15回転させることができる。すぐにせせらぎのような水になるのだが」と岩澤氏は語る。

 いいことずくめの冬期湛水・不耕起栽培だが、なかなか広がっていかないのも事実。普及を妨げる最大の原因は、「田畑は耕すもの」との「常識」だという。冒頭の田んぼの持ち主で、今や「売る米がない」ほど注文殺到の藤崎芳秀氏でさえ、最初の10年間は毎年やめようと思っていたそうだ。その理由は「みっともないから。農家にとっては、耕さないことは怠けていること」。また、冬期湛水を実践するには、取水権の関係上、今は自前でポンプを付けるしかないという現状も普及を妨げる大きな要因だ。

 今の農業は、トラクターを動かすにも化学肥料をつくるにも石油がいる。エネルギー資源の枯渇が危ぶまれる中、いざとなれば手植え・手刈りに切り替えられるこの栽培法は、日本の農業を大きく変える可能性を秘めた農法ともいえるだろう。

  (ニュース出所 地域開発ニュース 2008年秋)

      
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