2010年、日産は売れ筋の小型車「マーチ」の生産を、神奈川県の追浜工場からタイ工場へ全面的に移管した。グローバル経営の加速と国内生産の維持を両立することは難しい。
海外に生産拠点を移したほうが利益は増える。
〜グローバル化が日産の業績を支えていますが、一面では日本を見限ったと言えませんか。
「日本を捨てているのではありません。新興国が急成長しているので、相対的に日本市場の割合が低下している面はあると思います。
2000年にはグローバル販売240万台のうち国内販売は60万台、割合でいえば25%でした。現在も60万台を販売していますが、12年のグローバル販売予測は535万台ですから割合は約11%です。
決してものづくりが弱体化しているわけではありません。逆に、ものづくりの力が強いからこそ、これだけの逆風にも対応力がある。
日本は引き続き、本社や開発の中心となるマザー工場を置く場所です。戦略を策定するのも、主な意思決定をするのも日本でやります。
なぜなら日産のDNAが日本にあるからです。社長が日本人でなくても、それを変える必要はないのです。私が円高について懸念を示すのも、ものづくりの重要性を語るのも、日本を大切にしているからです」
グローバル経営と国内の産業基盤の維持の両立のために日産が実行しているのが九州での生産改革「九州VICTORY」だ。まず国内最大の生産拠点だった九州工場を分社化。本体より低い賃金体系にして人件費を抑制。同時に九州で生産された部品と、アジアで日系企業が生産している部品でコストダウンを図った。内製原価は43%も減らせる見込みだ。関東にある中小下請け企業には、「海外進出の余力がない場合は九州へ移ってきてください」と誘っている。
「すべてを日本に残すのは難しいけれど、全部移してしまえば小型車を造るノウハウが失われる。そこで日本メーカーが海外で生産している部品を持ってくることにしたのです」(志賀COO)
もっとも社員の中には、「海外工場で現地の若い社員を推進する仕事が増えました。賃金が安い彼らにすべて教えてしまうと、収益に敏感なゴーン社長はすべて海外に移してしまうのでは」と、不安がる声もある。
〜 電機産業は厳しい状況です。
「電機産業は円高による打撃がひどい。しかもライバル企業は通貨が安い地域にベースを置いているので日本より有利です。
日本の国際競争力を維持する方法は単純です。当座の問題は円のレートを普通のレベルに戻すこと。1ドル100円が妥当だと思います。長期的な問題はエネルギー政策を明確にすること。将来のエネルギーが不安だと投資に影響します。エネルギー源が何であれ、競争力のあるエネルギーが必要なのです」
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