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月刊 花みずき

商店街の現状と課題
 
 ・円滑化法の廃止後は

 ・S電気店・店主の話
 


ワンポイント
印紙税の軽減措置拡充と
非課税範囲拡大

月刊 経営一番

中高生52万人を蝕む
「スマホ亡国論」

・学校に行けない重症患者

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・どこからが依存か
・技術と追いかけっこ
・東アジアは“依存先進国”

編集後記
 〜時泥棒〜



業績31の原理

 経営一番 NO.221  2013年7月
 〜日本は「クオリティ国家」を目指せ〜

 大前研一氏が、日本の未来の「国のかたち」を提言する。「アベノミクス」は目先の皮算用にすぎず、激変する世界の中で日本が生き残るには、徹底して規制緩和と規制撤廃を行わなければならない。日本が再び繁栄するには、「道州制」の実現によって、各道州が競い合って「クオリティ国家」へと転換していくべきだ。

◆「成長戦略」には覚悟が必要

 「アベノミクス」も「TPP」も「インフレターゲット」も、いずれも日本の長期的な国のあり方を考える上では、重要なことではない。所詮は目先の皮算用だ。
 日本にとって本当に重要なことは、激変する世界のなかで、日本が生き残るための「国のかたち」を決めることに他ならない。
 安倍首相にも恐らく日本のあるべき姿や国家観があるのだろうが、そもそも世界で今何が起きているのかという現状認識ができていない。
 例えば、いわゆる「3本の矢」のうち、1本目の「大胆な金融緩和」と2本目の「機動的な財政出動」については、過去の自民党政権がさんざん使い古した政策である。
 問題は3本目の矢とされる「成長戦略」である。過去、40年ほど遡ってみても、成長戦略を実現した政治家は2人しかいない。1980年代のロナルド・レーガンとマーガレット・サッチャーである。この二人だけが規制緩和および規制撤廃を徹底的にやった。

 その結果どうなったか。規制を撤廃して、新たな産業を興そうとすれば、規制で守られていた産業が先で潰れて、大量の失業者が出る。功績が認められるのは後の時代になってからで、彼らは怨嗟の声が満ちる中、表舞台から去って行った。実際に経済成長を享受したのは、ビル・クリントンであり、トニー・ブレアだった。
 
つまり成長戦略が実を結ぶには、約15年ものタイムラグがあり、それを手掛けた政治家は、大量の失業者を生んだ「戦犯」として地獄を見ることになる。果たして安倍首相をはじめ、今の日本の政治家にそれだけの覚悟があるのか。

◆「低欲望社会」へと進む日本

 ここで日本の現実を改めて見てみよう。
GDPは中国に抜かれて、世界第3位に転落。かつては日本のGDPは世界全体の18%を占めていたが、今や6%前後に過ぎない。1人当たりGDPは、約370万円で18位だ。
 そして先進国のなかでどこよりも早く人口減少社会に突入している。2020年頃には、年間に正味100万人ずつ人口が減っていく。1年間で和歌山県がひとつ消えるのと同じである。一方では65歳以上の高齢者の人口は3000万人を超えて、総人口に占める割合は24.1%となっている。
 
少子高齢化社会とは「低欲望社会」に他ならず、今までと同じやり方では、日本経済の再生は不可能であることは自明の理だ。

◆「クオリティ国家」という選択

 どうすれば日本は、再生できるのかを考えるためには、今、世界で繁栄している二つのタイプの「国のかたち」を知る必要がある。
 ひとつは、「ボリューム国家」である。経済規模が大きく、人口・労働力のボリュームがあり、低コストの人件費を強みとした国々で、いわゆるBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)がその代表例である。
 もう一つは「クオリティ国家」である。典型的な国は、スイス、シンガポール、フィンランド、スウェーデン、デンマークだ。
 共通するのは、経済規模が小さく、人口は300万〜1000万人で、1人当たりのGDPが400万円以上。人件費は高いが、高い付加価値を生み出す能力と生産性を持った人材も揃っている。

 彼らは世界中に出かけて行ってグローバルに勝負する。また規制撤廃や税制の優遇措置などで、国外からヒト・カネ・モノ・企業・情報を呼び込むなどして、世界の繁栄を自国に取り込むのが非常に上手い。
 
この先、人口が減少していく日本が再び繁栄するとすれば、「クオリティ国家」へと転換するしかない。

◆州が競って企業を誘致するスイス

 ここでスイスの例を見てみよう。
 戦略の根本は、魅力ある環境を整えて、世界からヒト・モノ・カネ・企業・情報を呼び込むことにある。
 例えば連邦制のスイスでは所得税と法人税の一部について、カントン(州・準州)・コミューン(市町村)が独自に税率設定して、企業を呼び込む競争をしている。その結果、食料・飲料のネスレ、金融のクレディ・スイスやUBS、時計のスウォッチグループ、医薬品のロシュやノバルティスなど、世界屈指のグローバル企業がひしめきあっている。
 同時に国内では、時計づくりに象徴される伝統的な「クラフトマンシップ(職人魂)」に裏付けられた技術力と競争力を磨きつつ、グローバル人材の育成を積極的に行い、世界に向けて企業や人材を輩出している。
 
スイスの偉いところは、税制の優遇などを除けば「国が企業を支援しないこと」を徹底している点である。政府から企業への補助金の類は一切なく、倒産しかかった企業を政府が救済することもありえない。

◆「事業戦略型国家」シンガポール

 もう一つ、シンガポールの例を見てみよう。
 シンガポールは言わば「事業戦略型国家」であり、5年から10年という短いスパンで国の産業政策をシフトチェンジしていく。
 1965年にマレーシアから独立した時は、法人税率を引き下げて海外企業を誘致するとともに、電気製品の組み立てをはじめとする「労働集約型産業」を育成した。70年代に入ると、「高付加価値産業」へと移行、80年代は、空港や港湾を整備して、ASEAN(東南アジア諸国連合)の首都機能を担う戦略へと転換、金融や通信など「サービス産業強化」を指し進めた。90年代には、15年以内にIT国家を目指す「IT2000」という国家戦略を策定。2000年代に入ると、金融、バイオ、医療サービスなどを重点分野とした「知識集約型産業」の育成を強化した。

 またシンガポールの特徴として、ヒトを呼び込むことに積極的である点が挙げられる。特に金融ディーラーやIT技術者、バイオ研究者など特殊な技能をもつ人材に対しては、国がどんどん助成金を出して、受け入れ環境を整えることで、戦略的にこれらを“輸入”してきた。
 さらに、「エコノミクス・ディベロップメント・ボード」という国の組織が、とにかく海外企業の招致に注力している。
 スイスにしろ、シンガポールにしろ、税制など規制を緩和し、活動しやすい環境を整えることで、海外からのヒト・カネ・モノを呼び込んでいることがよくわかる。
次月へつづく

(ニュース出所 文藝春秋 6月号)
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