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月刊 花みずき

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ワンポイント
印紙税の軽減措置拡充と
非課税範囲拡大

月刊 経営一番

中高生52万人を蝕む
「スマホ亡国論」

・学校に行けない重症患者

・取り上げると大暴れ
・どこからが依存か
・技術と追いかけっこ
・東アジアは“依存先進国”

編集後記
 〜時泥棒〜



業績31の原理

 経営一番 NO.230  2014年4月
〜中高生52万人を蝕む「スマホ亡国論」〜

 「1日10数時間」熱中しても自覚症状なし。スマホの急速な普及に若者が壊れていく!

◆学校に行けない重症患者

 ネット依存が疑われる中高生は52万人―。
この衝撃的な数字は、私も加わった厚生労働省の研究班が全国の中高生に調査して、初めて明らかになった推計です。この調査結果に大きな影響を与えているのが、急激に普及しているスマートフォン(スマホ)です。特に、中高生の世界では状況は深刻です。昨年発表された内閣府の調査によると、中高生の25%、高校生の56%がスマホを所有しています。1年前の調査では、中高生が5%、高校生が7%でした。このスマホの急激な普及が、新しい依存性を生み出しつつあるのです。

 海外の論文でインターネットへの依存が取り上げられていた2008年頃、日本での状況を調べてみると、全国で270万人もの成人が依存傾向にあるという驚くべきデータが得られました。そこで2011年、久里浜医療センターに、全国に先駆けて「ネット依存専門外来」を開設したのです。開設して2年、すでに250人を超える患者を受け入れました。問い合わせは増え続け、今では7か月待ちの状況です。外来を実際に始めてみると、圧倒的に未成年が多く、「中高生の52万人が依存の疑い」という推計が出ました。「スマホ依存」はまだ疾患の輪郭さえはっきりしませんが、このまま放置しておけば深刻な社会問題となる、そんな危険性を感じています。

 
しかも、問題なのは若い世代がスマホ依存を深めていることです。学校に行けなくなり、身体を壊してしまう重症患者も少なくありません。冒頭で紹介した中高生対象の調査でも、「依存の疑いが強い」と分類された中高生のうち、59%が「睡眠の質が悪い」、68%が「気分が落ち込むことがある」と、具体的な症状すら訴えています。

◆取り上げると大暴れ

 昨年夏、両親に連れられて病院を訪れた14歳の女子中学生Aさんは、1日10時間も画面を見るようになってしまったといいます。まず悪影響が出たのは睡眠。使い始めて半年ほどの間に、夜中の2時、3時までスマホを見ているようになったAさんは、翌朝起きられず、学校も休みがちになり、1日自宅でスマホを見続けてしまうといいます。親がスマホを取り上げようとすると、血相を変えて怒り、暴力まで振るうようになってしまった。Aさんのスマホの使い方自体は、一般のユーザーとそうかわりません。メールを送ったりネットのサイトを見る傍ら、「LINE」やゲームと目まぐるしく切り替えているものの、どれも一般的な用途です。このように日常的な使用法と依存の境があいまいなのも、スマホ依存の特徴のひとつ。そのため、当人は、自分が依存症だという認識をもっていないケースも目立ちます。 
 
 
成人からの相談もあります。ある40代の女性の夫で会社員のCさんは、朝起きるとすぐにスマホを触り始め、家にいる間はスマホを見っぱなし。仕事中はチラチラ見る程度に我慢しているが、会社を出れば、食事中も入浴中もスマホにしがみついている。妻が何を話しても上の空で、相談事も頼み事もできないといいます。Cさんもまったく依存という意識がなく、妻が通院を提案しても、自分には必要はないときっぱり拒絶されたそうです。

◆どこからが依存か

 他の依存症の患者は、来院する時点で多少なりとも依存症であることを自覚していますが、スマホ依存の場合、ほぼ全員自覚がない。これまでも若者は、その時々に新しいものに熱中してきましたが、スマホが違うのは、ネットを通じて「誰か」に繋がっていること。すぐにメッセージを返信しないと学校での友人関係に支障が出るという生徒も少なくありません。さらに、ネット上の交流を重視し、ネット上でしかやりとりしない「友人」の方が「深い付き合いだ」と語る患者もいます。
 
  もう一つの特徴は、若者や女性など、これまで「依存」と縁の薄かった層の患者が大きな割合を占めるということ。冒頭で紹介した中高生の調査でも、ネット依存の疑いが指摘されたのは、男子が6%だったのに対し、女子は10%でした。
 ネット依存を通じて痛切に感じるのは、若い人たちの話から「葛藤」というプロセスを感じないことです。アルコール、薬物などの依存患者には、多かれ少なかれ「葛藤」が生じ、それが治療に向かう力にもなります。原因としては、彼らが精神的に未発達であること。現実世界での経験が不足している分、ネット上のバーチャルなアイデンティティに固執する傾向が強い。ネット上で人格が変わったり、「ネット右翼」と呼ばれるような人たちも同じ傾向の中にいるとも考えられます。

◆技術と追いかけっこ
 ネット依存に関しては、まだ治療法も確立していないのが現状です。治療薬もない。治療のガイドラインも確立されておらず、国内外の論文も限られている。ネット依存、スマホ依存の治療を行う病院が増えないのも、診療に決まった形がなく、一人一人に大変な時間が取られる半面、それに見合う診療報酬が得られないことも一因かもしれません。近年、急激に普及した「LINE」など、新しいコンテンツが次々と現れる。新しい技術、新商品と我々医師のイタチごっこが続いているのです。
◆東アジアは“依存先進国”

 ネット依存は、世界的に見ても東アジアが“先進国”です。韓国では、依存状態を自己評価できる「Kスケール」を使い、全校レベルで調査をしています。調査の結果、依存の疑いがある生徒にはカウンセリングを受けさせたり、場合によっては病院に行くように指導します。
 また、16歳になるまで、夜12時から朝6時まではオンラインにアクセスできない「シャットダウン制度」や、ネット依存の子供を集めた合宿「レスキュースクール」も各地で行うなど、国の政策として取り組んでいるのです。

 日本も必要な対策を練るべきです。放置すれば不健康な状態が蔓延し、国力の低下すら招く可能性があります。ネットやスマホは、倫理やモラルより、技術が先に行きすぎてしまったのが現状。道徳や規範がついて行けないうちに、日常生活に入り込み規制ができなくなってしまった。日本も、この課題に世界で最も早く突き当たってしまった国として、万全の対策が望まれるところです。

(ニュース出所 文藝春秋3月号)
 
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