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月刊 経営一番

〜攻めるのは「3兆円市場」
鮮魚の「アマゾン」になる〜


・1年半で銀行を辞めた
・魚1匹から注文できる
・失敗がアドバンテージ

編集後記
 〜旭山動物園とミッション〜



業績31の原理

 経営一番 NO.233  2014年7月
〜攻めるのは「3兆円市場」 鮮魚の「アマゾン」になる〜
 「旧態依然」の鮮魚流通に挑むベンチャー企業「八面六臂(はちめんろっぴ)」は、飲食店に24時間、iPadの画面をタッチするだけで好きな魚を1匹から注文できるサービスで、流通過疎地と海外を攻め市場を広げている。

◆1年半で銀行を辞めた
 アマゾン・ドット・コム。言わずと知れた、世界一のネット通販サイトだ。
日用品から家電、ファッション、食料品まで、日本国内で扱う商品は1億種類を超え、「買えないものはない」とも言われる。
その巨大な流通モンスターですら扱えない商品がある。「鮮魚」だ。
 「従事者は高齢化し、旧態依然の慣習がまかり通って業界は停滞している。そこを、『革命的』にやっている感じです」  鮮魚流通の「八面六臂」を率いる松田雅也(33)は、自ら起こすイノベーションをこう説明する。
 彼がさらりと使った「革命」という言葉の真意は後述するとして、八面六臂は、最先端のITと鮮魚という一見異質な組み合わせで、鮮魚流通の常識を打ち破ろうとするベンチャー企業だ。
一風変わった四字熟語の社名に特別な意味はないというが「3兆円」と言われる市場で、着実に存在感を強めている。
 松田は京都大学法学部卒。「面白い仕事ができる」と思い新卒でUFJ銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し、出世コースの入り口だった京都支店法人営業部に配属となるが、そこは自分が選んだ世界ではなかった。
 「言葉にするなら、(銀行は)しみったれているという感じでしたね」
 両親は大反対したが、「心の声に正直に従って」(松田)1年半で辞め、上京して独立系ベンチャーキャピタルに転職。しかし、ここも1年半で辞めて、電力事業者と需要家を仲介するベンチャーを起業するも失敗。物流会社グループで立ち上げたIT子会社で、漁協、荷受け、仲卸など複雑な鮮魚流通の実態を知る。ITで効率化できる余地があるとみて、2010年10月に現在の事業に乗り出した。
 この時点で松田の頭の中にあったのが、「鮮魚流通のアマゾンを目指す」というビジョン。
仕入れから顧客へ届けるまでの物流網を整備し、鮮魚流通におけるプラットフォーム(情報基盤)の構築を目指した。
 そもそも鮮魚流通は、漁師→市場→仲卸→飲食店と、消費者のもとに届くまで複数の業者を経由するのが一般的。
幾度も人手を介することで魚の鮮度は落ち、無駄なコストも膨らんで、業界は停滞していた。加えて、漁師をはじめ従事者たちの高齢化、零細・中小企業頼みという現実。
結果として、価格や鮮度で熾烈な争いを繰り広げているのは東京の山手線の内側くらいで、それ以外は「鮮魚流通過疎地域」だった。


◆魚1匹から注文できる
 松田は3兆円市場への足掛かりとして、その「過疎地」を攻めた。
 そのビジネスモデルはこうだ。
 まず、契約を結んだ飲食店に独自に開発した鮮魚受注アプリをインストールしたiPadを無償で貸与。 そのうえで、各店舗の注文パターンや料理長の好みといった顧客データを集積・分析し、毎日の注文を予測できるようにした。
 一方、全国の漁師、産地、市場、中間業者からはその日の鮮魚情報を収集し、自社で構築したデータベースに登録した。 さらに、全国の天気や海水温なども独自に分析し、仕入れ先を調整することで鮮魚をより安い値段で調達できるようにした。
 日々、膨大な商品情報を高速かつ最適に処理していく。
集約された「入荷情報」は、毎日顧客のiPadに届けられ、魚種、産地、サイズ、価格などの情報が写真付きで表示される。
 顧客である飲食店は24時間、画面をタッチするだけで好きな魚を注文でき、店には注文から数時間後には魚が届き始める。
 ピースがどれか一つ欠けても全体の絵が完成しない物流システムの構築は、さながら、巨大なジグソーパズルを制限時間内に完成させるゲームのようだ。
 八面六臂の取引店舗数は年3倍ペースで伸びていき、3月末時点で東京、神奈川、埼玉などに約500店。
今年は栃木や群馬などの北関東を中心に広げていき、年内1000店を視野に入れている。
事業目標は16年までに3兆円の0.1%を占める年商30億円、20年には10%の3,000億円を掲げている。


◆失敗がアドバンテージ
 システムの整備だけではない。店舗での販促用に取り扱う魚のPOPを作り、メニュー開発のためのコンサルティングも提供する。
営業担当者は常に取引のある飲食店を回ってクレームを聞き、クオリティーを確認しては、それをフィードバックする。この細やかさも八面六臂の強みだ。
 魚を食べるのは好きだったが、起業するまでの松田は鮮魚の知識ゼロ。起業した時の心境を、ある取材でこう語っている。
 「やる以上は人生を預ける仕事がしたい。その意味で鮮魚には、最もポテンシャルを感じた」  松田がポテンシャルを感じるのは、常に「現場」だ。
早朝5時過ぎ。松田の姿は東京・築地市場にある。市場が開いている日は、社員と一緒に本社(東京・新宿)からワンボックスカーで向かう。
自ら築地市場での買い付けも手掛け、それが終わると、そこから徒歩5分の路地裏にある同社の物流センターへ。センターには、漁師や産地から、そして先ほどの市場から、仕入れた鮮魚が次々と集まってくる。
 「例えば、サンマを毎日毎日、それこそ100匹、200匹と触っていくうちに脂の乗り具合や鮮度など、魚について学ぶ。それが、知識として蓄えられていくことは意義深い。五感直結です」
 ベンチャーで不可欠なのは、優秀な人材とシステム開発のための資金だ。
八面六臂は、ベンチャー投資ファンドなどから出資を受けて1億5,000万円を調達している。ベンチャーキャピタリストで、八面六臂の取締役でもある木下慶彦(28)は、12年12月に1,000万円を出資した。
 「彼は旧態依然だった鮮魚の業界構造にアマゾンのような顧客第一主義を持ち込んだ。iPadによるITサービスもそうだが、多くの鮮魚流通業者は顧客の声を拾う組織を作ってこれなかった。これを高いレベルで行っているのが八面六臂」
 いま松田は、海を越えその先の世界を見据えている。海外での和食ニーズは高く、すでにアジア、ASEAN諸国、アラブ首長国連邦のドバイなどから「日本のおいしい魚を届けてほしい」というオファーが来ているという。今年か来年のうちにはビジネスとして形にしていく考えだという。
(ニュース出所 AERA 4月14日号)


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