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〜金融緩和“バズーカ砲”は「巨額財政赤字帳消し」への禁じ手か?〜

・政府の借金を日銀が肩代わり?

・年金資金の国債運用減額と符合する日銀の国債増額

・為政者が陥りやすい インフレでの赤字解消

編集後記
 ドライマウスはインフルエンザに罹りやすい



業績31の原理

  経営一番 NO.240  2015年02月
〜金融緩和“バズーカ砲”は「巨額財政赤字帳消し」への禁じ手か?〜
 その場しのぎの景気浮揚策のために政権に協力するにも限度がある。物価を守り、金融システムを守るという日銀の本来業務とかけ離れた「異次元緩和」は国民生活を毀損しかねない。

◆政府の借金を日銀が肩代わり?
 消費税が8%に引き上げられた14年4月以降、消費が減退、設備投資も伸び悩み景気が失速。各種経済指標はひどい結果となった。4〜6月期のGDP(国内総生産)が7.1%のマイナスに沈んだのに続いて、反動増加期待された7〜9月期GDP速報値も、マイナス1.6%と出て衝撃が走った。
 消費税増税法には経済状況を総合的に見て判断する「景気条項」があり、これを適用して「再増税見送り」を決めればいいのに、政府与党は「解散」という奇手に出た。景気対策や低所得者対策、歳出削減などの努力を尽くさず、対策の立案と実行に空白期間をつくる解散に打って出たのは「アベノミクスの失敗を隠蔽し、国家主義的政策を推進するための基盤を確保することを狙った個利個略解散」と酷評されても反論できないだろう。
 低迷し続ける景気への対策として、14年10月31日に日銀が「バズーカ砲」と呼ばれる異次元金融緩和策の追加策を決定した。デフレ脱却に向け「物価2%上昇目標」達成への道筋をつけることを理由にしているが、財政健全化や滞在成長率の引き上げが実現しない中で、日銀の国債大量買入れが際限なく続いてしまうとの懸念もある。
 日銀がサプライズ的に決定した追加金融緩和は、@ 年60兆〜70兆円のペースで増やすとしていた資金供給量を約80兆円まで拡大。中長期国債の買い入れペースを年約80兆円と、現状の約50兆円から30兆円程度増やし、平均残存期間もこれまでの7年程度から、今回7〜10年程度に最大3年程度延長する、A 上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の保有残高をこれまでの3倍に増やし、それぞれの買い入れペースを年間約3兆円と年間約900億円に増やすなどというもの。
 潜在成長率が低下する中で、大量資金を市場に供給すると、日銀券の価値が下がり物価上昇に歯止めが利かなくなる懸念が大きい。政府の国債を日銀が直接引き受けることは財政法で禁止されているが、実際には、毎年一部の国債は例外的に直接買い入れられている。国債の日銀買い入れ額が拡大するにつれて、日銀が日本政府の借金を肩代わりするような形になりつつある。
 現在の国債発行額は約800兆円で、このうち日銀の国債保有残高は14年末に200兆円に達する見込み。この額が際限なく増えれば、日本国債への信任が薄れ、国際価格が下落(金利は上昇)する可能性があり、日銀には多額の含み損が発生する。
 これを無期限に行えば、財政や通貨に対する信任がなくなり、将来ハイパーインフレ(急激な物価上昇)を引き起こす懸念が高まってしまう。

◆年金資金の国債運用減額と符合する日銀の国債増額
 日銀が追加緩和を決めた同じ日に打ち出されたのが、年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)による国債運用減額。GPIFが株式や外貨建て資産などリスク資産の比率を引き上げるのに合わせ、ウェートが引き下げられる国債を日銀が吸収するため、日銀買い入れを増やしたと市場関係者は見ている。実際、日銀が今回決定した長期国債購入の増額は、GPIFの国債比率引き下げから算出される30兆円とぴったり合致するのだ。
 安倍晋三政権にとって、アベノミクスの最大の課題であるデフレ脱却が至上命題。物価上昇の勢いがストップし、2%のインフレ目標の達成が覚束なくなっていることに、政府・日銀ともに危機感を抱いている。国民の大切な年金資金を株式などリスクマネーに多く投資するのは禁じ手に近い。株価を上げるために使える手段を総動員するのは将来に禍根を残す。今回の金融緩和は黒田東彦・日銀総裁が10%再増税実施へ側面支援になることを狙った奇策との見方も根強い。首相の「解散」も同じだが、政治的思惑で中立であるべき金融政策が左右されるとすれば不幸なことである。
 超金融緩和により円相場は一時1ドル=117円台となり、1年前に比べると2割も安くなった。輸出より内需で稼いでいる中小企業にとっては猛烈な逆風だ。円安で原材料、電力代が上昇し、コストがかさんでいる。下請け中小・零細企業が価格に転嫁できるならいいが、値上げを認められるケースは少ない。大企業も厳しいグローバル競争を戦うために、簡単に値上げ要求を受け入れられない事情がある。
 大企業製造業は生産の海外移転が進み、円安になっても輸出の増大にはつながりにくい。輸出が増えなければ下請け企業の受注も伸びず、原材料など輸出コスト増だけがのしかかる。製品納入先の大企業が円安で業績を回復させたとしても、下請け中小企業に恩恵は及ばない。
 早川英男・元日銀調査統計局長は、「対GDP比率でギリシャを上回る国債残高を抱えながら日本の財政が維持されてきたのは、国債のほとんどが国内で消化されていたことと、デフレ・低金利で利払い費用が増えなかったことによるもの」と分析。「高齢化による貯蓄率の急落や構造的貿易赤字により国債安定消化の基礎は崩れかけ、税収が歳出の半分しかない日本では、デフレ脱却が実現してもプライマリーバランスすら改善しない」と警告している。
 巨額財政赤字は潜在成長率アップや徹底した歳出削減、増税で解消するのが真っ当な方策だが、人口減少と景気低迷が続く日本ではハードルが高い。強い政治力も必要となるが、これも期待できない。

◆為政者が陥りやすい インフレでの赤字解消
 そこで為政者が誘惑に駆られるのが「インフレによる赤字解消」。大平正芳・元首相は蔵相時代に、「増税も歳出削減もできない中、財政赤字をなくすために為政者が陥りやすい安易な方法はインフレ。インフレにすれば最大の借金を持つ国が最大の恩恵を受けるので誘惑に駆られやすい。ただ年金生活者や低所得者は困窮してしまう」と語っていた。首相時代に「一般消費税導入」をぶち上げたが、道半ばで倒れた。
 今回の異次元金融緩和は、出口戦略を今のうちから準備しないと、大平氏が懸念した「禁じ手」につながるのではないか。大戦後の日本や西独では膨大な戦時債務を超インフレにより帳消しにした事例があるが、国民にとっては悲劇である。政府日銀には、景気浮揚と通貨価値を守り、ハイパーインフレを防ぐ二つの目標を両立させるための中立的政策が求められている。
 (ニュース出所 エルネオス 12月号)

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