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月刊 経営一番

〜相続「節税セミナー」は後悔のもと〜

・税理士に相談すれば安心か

・節税セミナーは大袈裟すぎる

・「マイナンバー制度」こそ鬼門

編集後記
 「危機感」日本の金融は大丈夫か?



業績31の原理

  経営一番 NO.242  2015年04月
〜相続「節税セミナー」は後悔のもと〜

 15年1月から相続税の課税対象が広がった。銀行、生保、住宅メーカー、仏具店まで、カモネギたちを逃すまいと、節税をあおっているが、よくよく吟味しないと、とんだ散財をしかねないという。

◆税理士に相談すれば安心か
 15年から相続税の課税対象が広がったのを受けて、税理士や金融機関、不動産・住宅メーカーなどが「節税ビジネス」を競っている。
 だが、「相続大増税」の実態はイメージ先行で、本当に預貯金を取り崩してまで相続に備えるべき状況なのかははなはだ疑問。銀行や税理士に踊らされ、かえって後悔が残る相続になる恐れが拭えない。
 15年1月からは妻と子ども2人が相続する場合の相続税の非課税枠(基礎控除額)が7,000万円から4,200万円に縮小された。1950年に現行税制の骨格が定まってから、非課税枠の縮小は初めて。政府が見込む税収増は年約2,500億円。遺産総額が5,000万円を超えるあたりで相続税を払う可能性が出てきたから、これまで相続税とは無縁だった中流家庭も無関心ではいられなくなった。
 電話やダイレクトメールで勧誘してもけんもほろろの年配の「小金持ち」が、余裕資産を取り崩したい、話を聞きたいというのだから、こんなビジネスチャンスはめったにない。銀行、生保、住宅メーカー、さらには仏具店まで、カモネギたちを逃すまいと、あちこちでセミナーを開いて節税をあおっている。節税は所詮、商売の入り口。よくよく吟味しないと、とんだ散財をしかねない。
 信託銀行がイチ押しで勧めるのが、孫のための教育資金をまとめて非課税で贈与できる「教育資金贈与信託」。最大1,500万円まで贈与税を払わずにすみ、相続税も減らせるという仕組みが人気を呼んでいる。
 だが、せっかく非課税で贈与しても3年たたずに被相続人(親)が亡くなれば、贈与済みの財産にも相続税がかかる。「だから決断は急いだ方がいい」というが、亡くなる前には医者にかかる。入院してお金が必要になっても中途で口座を解約できず、現金は引き出せない。
 生命保険会社は「子どもを受取人とする終身保険に入れば相続財産を圧縮できる」という。だが、高齢者の保険料は相当割高になる。保険料負担と節税額に大きな違いがなかったり、保険金の受取人を誰にすべきかで兄弟が「争族」に陥ったりしては元も子もない。
 住宅メーカーは「自宅に賃貸アパートを併設すれば、相続税の対象となる資産の評価額を減らす特例が使える」と説くが、建築資金を工面するため組んだローンの負担は子孫に残る。「家賃収入分を住宅メーカーが保証してくれると言うから大丈夫」というのは甘い。満額保証されるのはアパートが新しいうちだけで、時間が経って入居者が見つけにくくなれば家賃は下がり、保証額は増えないことが多い。預金を不動産に変えてしまうと資産を分割しにくくなり、「争族」の新たな火種になる。
 税理士に相談すれば安心、というのも怪しい。税理士は税務申告などの手続きをするのが仕事で、節税を請け負っているわけではない。しかも税理士になるのに相続税法は必修科目ではなく、申告に携わったことがない税理士も多いという。
 「節税セミナーに紛れ込んで勉強している税理士もいるらしい。不動産実務に疎い税理士は不動産価格の評価がいい加減だったりして、節税どころか余計に相続税を払わされることもある」(関係者)。高い報酬を払ったあげく高い相続税を取られ、別の税理士に申告をやり直してもらって、取られすぎた相続税の還付を受けるケースもある。相続を専門に扱う税理士事務所以外は信用できないのだ。
 貴金属店や仏具店では、高価な純金の仏具や仏像が飛ぶように売れている。日常の故人の礼拝に使う仏具には相続税がかからないからだが、税務署が礼拝ではなく投資目的と判断すれば課税対象になり得る。資産隠しと紙一重の節税の手口は、税務署の心証を著しく悪くすることは覚えておいた方がいい。

◆節税セミナーは大袈裟すぎる
 財務省によると、相続税の課税対象になる相続件数は、これまでの「相続全体の4%程度」から「6%台」に増える。大手税理士法人の試算では、東京、神奈川、千葉、山梨の1都3県で相続税を払う対象者の比率はこれまでの7%から15%に増え、税務署に申告が必要な相続の件数は5万件弱(21%)から10万件(45%)に増えるという。
 だが、逆に言えば配偶者の税額軽減が使えない「二次相続」を含めても、首都圏でさえ申告すれば3分の2は無税になり、増税後も8割以上は相続税を払わなくて済むのだ。税率もアップするのは2億円超の資産を相続する人だけで、ほとんどの人に影響はない。節税セミナーでは「申告をしないとさまざまな減免が受けられず、延滞税を加算される恐れもある」と脅されるが、それも大袈裟過ぎる。例えば配偶者の税額軽減は期限が過ぎてからの申告でも適用され、加算税や延滞税が課せられることはめったにない。全国の税務署は管轄内で死亡届を出した5,000万円以上の相続財産があると思われる遺族に対し、財産の状況などを「お尋ね」する準備を進めており、申告漏れが頻発することも考えにくい。
 財務省幹部は「相続増税への関心が高いのは、年配者にバブルで地価が急騰した1990年前後に相続税を払えない世帯が急増し、社会問題になった記憶があるから。その後、地価が下落したのに20年も拡大した非課税枠を放置してきた方がおかしい」と言う。

◆「マイナンバー制度」こそ鬼門
 国税当局が幅広く「お尋ね」を出すのは、しっかり課税している姿勢を見せて、「アベノミクスは格差を拡大させる」といった批判をかわし、消費税率引き上げの環境整備をするため。だとすると「小金持ち」たちが本当に節税対策に血眼にならなければいけないのは、むしろマイナンバー制度が導入される16年以降かも知れない。国民一人ひとりに「背番号」が割り振られ、預貯金や株式などの金融資産がひとつの番号で紐付けされ、国は個人の資産や所得を把握しやすくなる。
 税務署の「お尋ね」は消費税再引き上げに向けたさらなる所得課税強化に備え、個人資産を丸裸にする布石。16年の今ごろは金融機関が開く「マイナンバー導入対策セミナー」が大盛況になっているかも知れない。
(ニュース出所 FACTA 2月号)

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