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月刊 経営一番

〜強大化する“税逃れマシーン”〜

・欧州はまるで税逃れ天国

・税逃れの仕組み

・子会社を親に換えるインバージョン

・調査の責任者が作った秘密の金融地帯

編集後記
 平和をつなぐ



業績31の原理

  経営一番 NO.243  2015年05月
〜強大化する“税逃れマシーン”〜

 アップルなどの国際的な大企業が、「税逃れ」によりほとんど税金を払っていないことが問題になっている。違法ではないが、制度の穴を巧妙にかいくぐるやり方に批判が集まっている。しかし、対策は簡単ではない。

◆欧州はまるで税逃れ天国
 14年6月、イギリスの『インディペンデント』紙は「日本も法人税リーグの国際的底辺への引下げレースに参加した」と報じた。
 英国政府は現在22%の法人税率を2015年に20%に引き下げる方針である。これに対して日本政府も、現在35%の法人税の実効税率を20%台へと大幅に引き下げる計画を発表している。
 しかし、『インディペンデント』紙はこうした法人税率の引下げを「悪しき税の競争戦」と呼ぶ。
 ノーベル経済学賞を受賞したトマ・ピケティは、その著書『21世紀の資本』でむしろ累進課税や国際協調のグローバル資本税の導入などを提案する。2013年に開かれた先進国サミットやOECD(経済協力開発機構)でも、企業に対する減税は、他の大衆に対する増税となるという認識に立っている。
 そんな中、年間17兆円の売り上げを世界で稼ぎ出すアップルが、まったくといっていいほど納税をしていないというニュースが14年夏に流れた。この“アップル現象”を、最初に追求開始したのは、EU(欧州連合)の欧州委員会だった。米国のアップル、スターバックス、グーグルなどが、法人税率が低い欧州のタックス・ヘイブン国に所得を移転して納税額を減らしていたのだ。
 しかし、アップルにしてみれば、それは税金逃れでもなく、適法な節税といいたいところだろう。

◆税逃れの仕組み
 その仕組みはこうだ。アップルは法人税率の低いアイルランドに、本来の営業を行う子会社とは別に子会社(アイルランド第一法人)を設立し、コストシェアリング契約により、無形資産について費用負担割に応じた利益を第一法人に移転する。これで米国政府に課税されることはない。
 また、第一法人の管理機能をタックス・ヘイブン国である英国領バージン諸島におくことで、アイルランドでも法人税課税を受けることはない。
 さらにアップルは無形資産のライセンス契約においては、使用料課税のないオランダ法人を経由して支払うことで、源泉税が免除される。
 このようにアイルランドに二つの会社をもち、途中にオランダを経由させる税金逃れは、「ダブルアイリッシュ・ウィズ・ダッチサンドイッチ」と呼ばれている。結果、アップルの利益の大半はどこからも課税されなくなる。グーグルも「ダブルアイリッシュ・ウィズ・ダッチサンドイッチ」を採用している。オランダは利子及び知的所有権の使用料について源泉徴収税を課さず、またオランダ親会社が外国子会社から受け取るすべての利益を免税とするなどの税制措置がある。つまり、オランダを通じてタックス・ヘイブンに利益を移転する税逃れの仕組みが完成しているのだ。
 英国のスターバックスは、英国で発生した利益を、オランダの関連会社にロイヤリティを支払う形で消滅させている。同時にオランダ子会社は、スイス子会社からのコーヒー豆仕入れに対して2割の利ザヤを上乗せして、低税率国スイスに利益を集中させた。その結果、英国では過去15年間のうち14年間は損失を計上し納税をしなかった。
 英国で稼ぎまくっていたスターバックスが英国にいっさい納税していなかったことは、英国市民を刺激した。法人税優遇を計画していたオズボーン英財務相も「租税回避の疑いのある多国籍企業には、英国内で上げた利益に対して25%の税率を課す」と言わざるを得なくなった。

◆子会社を親に換えるインバージョン
 もっとも、納税していないという批判は、100%当たってはいない。前例に挙げた各社も、欧州が取り決めた租税ルールには則っているからだ。
 だが、本国の米国は黙っていない。これまでも、多国籍企業は配当でなく米国の親会社向け融資という形で35%の米国法人税を回避し、自社株買いを行うなどのループホールを「開発」してきた。
 いまの流行は、税率の低い国の企業を買収して本社を移し、この新親会社を軸に資金の流れを再構築する「インバージョン」(租税地変換)だ。
 しかし、米上院を中心に批判が巻き起こっている。槍玉に上がったのは、租税回避を狙ったとも受け取れる製薬世界最大手ファイザーによる英・スウェーデン医薬資本のアストラゼネカ買収だ。
 だが、ファイザーだけではなかった。多くの企業が、外国企業の買収と同時に法人税率の低い国へ本社機構を移すというシナリオを描いている。
 議会や大統領が非難しようと、多国籍企業が節税する流れは止められない。知的所有権を海外子会社に移し、海外子会社を通じて製品を販売するパターンを完成させたマイクロソフトも、金融資産の91%をすでに米国外に置いている。
 キャタピラーもスイス子会社に利益を集中し24億ドル規模の米国法人税を回避、スイス政府と交渉して実質法人税率を4〜6%の低率に抑え、自国外で稼ぐ体制を創り出し、金融資産の85%以上をスイスに留保する。

◆調査の責任者が作った秘密の金融地帯
 このままでは「国益が損なわれる」とオバマ大統領は怒り、米連邦政府は14年9月に規制に乗り出した。外国に移した新規会社が米国内の旧親会社に直接融資した場合も米国法人税を課すこととしたが、悩みは、インバージョン自体は違法ではないことだ。そこで、急ぎインバージョンを絶つための本格的な税制改正を議会に訴えている。
 ただ、アイルランド政府は14年10月に租税回避の抜け道を廃止することを決めている。英国のオズボーン財務相も、租税回避の疑いのある多国籍企業には、英国内で上げた利益に対して25%の税率を課すと約束せざるを得なかった。
 税金優遇措置の「秘密の帝国」ルクセンブルクへの調査も欧州委員会が進めている。アマゾンのルクセンブルク持ち株会社は3.2億ユーロの利益を上げたものの、納税はゼロだった。
 もっとも、同委員会の最高権限を持つジャン・クロード・ユンケル委員長は、首相在任中に、多国籍企業との精力的な交渉でこの税制優遇措置を取りまとめた当人である。同委員長は、ルクセンブルクが調べられるとするなら、他の国々も調べられねばならないと牽制する。
 2010年現在、21兆ドル、世界GDPの3分の1を占める多国籍企業の「秘密の金融地域」を暴くことがどこまでできるのか。多くは期待できない。
(ニュース出所 NEW LEADER 2月号)

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