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月刊 経営一番

〜2025年「老人大国」への警告〜

・高齢社会に備え研究組織を発足

・「虚弱」への注意が必要

・原因の上流には「社会性」



編集後記
 インバウンド消費とシニア消費



業績31の原理

  経営一番 NO.246  2015年08月
〜2025年「老人大国」への警告〜

 10年後の2025年、人口の多い団塊世代が75歳以上の後期高齢者に突入し、約5人に1人が75歳以上という未曾有の人口構成となる。超高齢社会の問題点を東大の研究が明らかにした。

◆高齢社会に備え研究組織を発足
 世界の歴史でも例のないほど高齢者が増える「超高齢社会」の日本。昨今のニュースでも、高速道路の逆走、未使用の処方薬の増加、空き家問題など高齢者に関する問題が出ない日はない。今後高齢者の増加により多様な分野で問題が生じてくるのは間違いないことだ。
 なかでも注視されているのが、「2025年問題」だ。この年、人口の多い団塊世代が75歳以上の後期高齢者に突入する。この年から75歳以上だけで(65歳ではない)2200万人になり、約5人に1人が75歳以上という未曽有の人口構成になる。医療や介護など社会保障もいま以上の額になることは避けられないが、問題は財政だけに留まらず、社会のあらゆる方面に及ぶだろう。
 こうした状況を前に、東京大学でも研究が動き出している。2009年、学内のさまざまな分野の研究者が集まり、横断的に高齢社会を研究する組織、高齢社会総合研究機構(IOG)が発足した。
 そこで今回、東大IOGの研究者の知見を仰ぎながら、10年後の超高齢社会の到来に備えて何をすべきか、検討した。
 もともとIOGがジェロントロジー(老年学)を専門とする秋山弘子東京大学特任教授を中心に「Aging in Place(いつまでも住み慣れた地域・家で安心して暮らせるまちづくり)」の実現を目指して2006年に企業の寄付講座として始まった。扱う分野は、医療、看護、介護、雇用、住宅、まちづくり、情報システム、法制度など多岐にわたり、千葉県柏市や岩手県大槌町、福井県と提携し、住民と協働した社会実験的研究に取り組んできた。
 柏市ではUR(都市再生機構)の賃貸住宅団地の建て替えプロジェクトを通じて「い・しょく・じゅう(医、食/職、住)」の見地から先進的な高齢社会対応の生活環境づくりを進め、震災で多大な被害を受けた大槌町では仮設団地や復興市街地のコミュニティづくりをベースにした健康づくり活動や子育て支援活動の活性化を推進している。
 前者は大都市郊外、後者は地方の小都市で人口規模でも交通手段でも買い物環境でも暮らしを取り巻く環境は異なる。それでも、高齢者のニーズに注目すると、社会が注意しなければいけない部分はさほど違いはないことがIOGの研究でわかった。都市計画の専門家である大方教授は、柏と大槌のどちらの研究にも携わったが、高齢者の暮らしに必須なことは三つと指摘する。
 「一つは、単にバリアフリーなだけでなく、脳溢血等の原因となるヒートショックの少ない、また、転倒・骨折しにくい『安全安心住宅』、つまり寝たきりにならずにすむ住宅の研究開発と普及。二つ目は引きこもりを防ぐこと。日々外に出て、集まって楽しんだり、散歩をしていると、身体機能の維持だけでなく、メンタルでも失調も防げる。したがって、街に出て歩きやすい、公共交通が充実しているというだけでなく、気持ちの良い散歩道や、人が集まって、いろいろな活動のできる場所を整備して、街に出たくなるような環境を整えることが必要です。三つ目は専門職の力だけでなく地域住民の力も取り込んだ住宅ケア体制の確立です。こうした知見も柏や大槌の研究でわかってきたことです」

◆「虚弱」への注意が必要
 2012年、政府によって「高齢社会対策大綱」が閣議決定されたが、ここでは〈「人生90年代」にふさわしい社会への転換を真に推し進める〉と、人生90年を前提として対策を整えることが示された。ただ馬齢を重ねるわけではない。人生90年時代には、心身の健康を高く維持し、「より良く」日々を生きる。そうした「サクセスフル・エイジング」を追求することが今後は誰にも必要になってくる。
 では、そんなサクセスフル・エイジングを追求するには、どのような面に注意すればよいのか。千葉県柏市での大規模調査でそのヒントが見つかった。結論から述べると、@社会性があって、A毎日よく動き、Bよく肉料理を食べる。こう記すと、世間話にしか聞こえないような健康の秘訣だが、これは2000人という大規模で実証的な調査から出た結果だ。
 調査に当った東大医学部からIOGに参加している、飯島勝矢准教授(IOG執行委員)が言う。
 「老年医学では、虚弱を意味するフレイルティーという言葉があります。高齢者が元気に暮らしていくには、このフレイルティーへの注意、すなわちフレイル予防が重要なのです。では、どうすればいいか。それを調査したのです」
 2012年から柏市の協力を得て行った大規模追跡調査では、加齢による心身機能の低下、とくに筋肉量の減少=サルコペニアの解明を目的として、数百の検査を行った。検査項目は、採血や体組成測定からはじまり、握力や歩行速度、立ち上がりテスト、口腔の咀嚼力に咬合力・滑舌・舌圧など。さらに生活実態や社会性、そして食事摂取内容を把握するアンケートや聞き取りも行った。

◆原因の上流には「社会性」
 調査結果を多様に掛け合わせて分かったのは、高齢者の生活においてフレイル予防でもっとも大事なのは「社会性」ということだ。これはぼんやり想定しつつも、やや驚く結論でもあったと飯島准教授は言う。
 「運動機能や栄養などさまざまなデータがあるのですが、最終的なデータの結論をサルコペニア=筋肉量の減少と位置づけると、原因の最上流に『社会性』を置かざるをえない。栄養状態が衰えて、血液中の各因子の値が落ちてから、社会性が落ちるのではなく、社会性が衰えるところから負のスパイラルが始まります」
 社会性を維持するとなると、話は医学からやや遠のく。近所での集い、カラオケ、ゲートボール、散歩といった日常的な娯楽も十分「社会性」維持に役立つし、それが筋肉量の維持、フレイル予防にもつながる。だが、それが医学的にも正しい結論だった。こうした大規模調査から得た結論は、どこか昔からの助言に近い印象もある。だが、2000人の調査結果というエビデンスによる確信は非常に意義深いと飯島准教授は言う。
 この柏スタディ(研究)はすでに他の自治体からも関心をもたれており、今後他県のフレイル予防に使われていく可能性が大きいという。
(ニュース出所 文藝春秋 7月号)


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