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〜マイクロチップを身体に埋め込んで自分を“アップグレード”する若者たち〜

・人体の進化が止まらない

・ブームは世界に拡がるか





編集後記
 平均寿命アップとラジオ体操



業績31の原理

  経営一番 NO.247  2015年09月
〜マイクロチップを身体に埋め込んで自分を“アップグレード”する若者たち〜

 チップを埋め込んだ手をかざすと、ロックを解除したり電子機器を起動させたりできる。世界中の若者に注目されつつある、人間の“サイボーグ化”の最前線を仏誌記者が追った。

◆人体の進化が止まらない
 3月6日金曜日、午後6時。コペンハーゲンの中心街にあるボディピアススタジオの一室。アナス・ホゥ・ニッセンは黒い治療椅子に腰かけている。ヨワン・ウェステルルンドの手には、10センチほどの注射器が握られている。注射針は、採血で使用する針より3倍ほど太い。ウェステルルンドがニッセンの手の甲の皮膚をつまむと、そこに注射針が素早く刺し込まれる。3秒ほどが過ぎただろうか。ウェステルルンドが言った。
 「おめでとうございます。あなたはアップグレードされました」
 ニッセンの皮膚の下には、たった今、米粒2つ分の大きさのマイクロチップが埋め込まれました。それはRFIDという小型の無線認識装置で、迷子防止のためにペットに埋め込むチップと同じ種類のものだ。ウェステルルンドはこう説明する。
 「ざっくり言うと、12ミリのガラスのカプセルに、小さなICとアンテナが入っています」
 「マイクロチップ・インプラント」の費用は、アフターケアーも入れて200ユーロ(約2万6,000円)ほどだ。
 身体にチップを埋め込むことに、一体どんな利点があるのだろう。チップの記憶容量は880バイトで、現時点ではキーホルダー型のICタグなどと、できることは同じだという。チップをNFC(近距離無線通信)リーダーに近づけると、個体識別情報が発信される仕組みだ。リーダーのプログラムを組めば、ドアのロックを解除したり電子機器を起動させたりするなど、さまざまなタスクをこなすことができる。アンドロイド用アプリ「NFC Tools Pro」をダウンロードしたスマートフォンなら、チップの情報を読み取ったり、編集したりすることができる。車体に触れたら自動でエンジンがかかるようにバイクを改造している人もいるという。
 近年、マイクロチップ・インプラントに興味を持つ層が広がっている。特に熱心なのは「バイオハッカー」と呼ばれる若者たち。彼らの行動原理は、オープン志向とシェアを信条とするハッカー精神にある。バイオハッカーはその精神に則り、身体に手を加えながら生命体の可能性を探るのだ。
 スウェーデンのバイオハッカー集団「バイオニフィケン」の創設者で、自身もマイクロチップを埋め込んでいるハネス・ショブラッドは、「チップを埋め込む人の数が増えれば、企業や公共機関が開発に力を入れるようになることが期待される」という。彼らの団体だけでも、昨年9月から300人弱がチップを埋め込んでいるという。ショブラッドは身体改造の愛好家ではない。
 現在は、講演やコンサルティングなどで生計を立てている。彼はロンドンの金融街で働いた後、スウェーデンの大手不動産会社に入社。ロシアやウクライナに駐在して働いていたが、ある日“社畜”の運命から逃げ出すことにしたという。彼が未来のテクノロジーに関心を持つようになったのは、米国のシンギュラリティ大学で受けた講座がきっかけだった。シンギュラリティ大学とは、グーグルやNASAが資金を出している機関で、未来の“破壊的”テクノロジーを研究している。ショブラッドは、同大学のスウェーデン大使に任命されている。

◆ブームは世界に拡がるか
 ショブラッドらがチップを購入している米国のウェブサイト「デンジャラス・シングス」の開設者エイマル・グラフストラは、マイクロチップ・インプラントは世界的な現象だと言う。
 「この1年で4000個のチップが売れた。購入者の大半は米国人だが、ドイツやオランダ、スウェーデン、フィンランド、ベルギーからの注文も多かった」
 しかし、グラフストラには懸念していることがある。それは、一部企業が独占的にこの技術を開発していくのではないかということだ。
 「私は、マイクロチップ・インプラントの技術がオープンであってほしいと思っている。私自身、05年からこの技術の可能性を探り、いろいろ試してわかったこともある。たとえば、メーカーと話すうちに、家畜用や製造業用のチップには、人体に有害なものもあるということが判明した」
 グラフストラは、チップの埋め込みに関するアドバイスを多くの人から求められるようになった。そこで、「人体に無害なチップと、チップを安全に埋め込む方法」を開発し、それをビジネスにすることにしたのだ。
 一方、ショブラッドは、未来の世界では、身体に埋め込んだチップで、あらゆる支払いから、コレステロール値の計測までできるようになると予測している。また彼は、医療とデータ保護の2分野で、マイクロチップ・インプラントの発展に大きな期待を寄せる。しかし、チップの埋め込みが普及していったら、すべての人間が数値化され、情報を管理されたり、追跡されたりしないのか。
 「どの情報を誰と共有するかは個人が決めるべきこと。このチップはリーダーがなければ作動しないので、チップだけで個人の居場所を追跡することはできません」(ショブラッド)
 現在はそうかもしれないが、将来的にはどうだろう。この種の技術で集められた情報を多国籍企業や国家が入手することになれば、プライバシーに関する深刻な問題が生じる恐れがある。ショブラッドもその点に異論はないが、「我々の役割は、新しいテクノロジーを使った実験を行い、そうした技術の存在を広く世間に知らせること」と言う。
 ショブラッドが影響を受けた人物の一人に、パトリック・メスタトンがいる。メスタトンは、ストックホルムの中心街に最近オープンした「エピセンター」という施設の共同創設者兼CEOであり、ショブラッドを同施設の「最高“破壊”責任者(Chief Disruption Officer)」に任命した人物だ。
 メスタトンは、エピセンターを「企業文化を変えていくことに関心を持っている大企業は、この施設を社外の実験室として使っている」と説明する。
 チップを駆使した技術は、すでに製造業や物流業で使われており、その市場規模は85億ユーロ(約1兆1,000億円)にものぼる。なぜ、このテクノロジーを人間にも応用しないのだろうか、と考えている人は少なくないだろう。この現象は、単にテクノロジーのパイオニアたちの気まぐれにすぎないのか。それとも、新しいトレンドの始まりなのだろうか?
(ニュース出所 クーリエ・ジャポン 7月号)


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