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月刊 経営一番

〜「新3本の矢」も「1億総活躍」も悪評粉々〜

◆インパクトのない自画自賛演説

◆具体的政策ではない「新3本の矢」

◆海外投資家の売り姿勢はアベノミクスへの失望



編集後記
〜分 度〜



業績31の原理

  経営一番 NO.251  2016年01月
〜「新3本の矢」も「1億総活躍」も悪評粉々〜

 通常国会の大幅な会期延長で安全保障関連法案を成立させた安倍晋三首相。経済最優先に軸足を戻す姿勢を訴えるが、中国経済の動揺などで足元の景気が減速、アベノミクスの息切れが目立ってきた。

◆インパクトのない自画自賛演説
 「1にも、2にも、3にも、私にとっては最大のチャレンジは、経済、経済、経済であります」
 9月29日、ニューヨークを訪れていた安倍首相は、金融関係者を前に行ったスピーチをこう締めくくった。安倍首相はこれまでも、ニューヨークやロンドンを訪れるたびに経済関係者を前にしたスピーチを行い、自らの経済政策である「アベノミクス」を強くアピールしてきた。
 だが、そうした過去の演説から比べると、今回は明らかに出来が悪かった。というよりも、まったくインパクトに欠けていたのだ。スピーチの大半が自画自賛だったからだ。
 「大胆な金融緩和によって、物価は反転し、2年連続で上昇しています。日本銀行の調査でも、家計では、将来的に物価は毎年2%上昇するだろうと考えるようになっています。日本に長らく巣食っていた、デフレマインドは、一掃されました」
 「60年ぶりの農協改革、医療制度改革、電力市場の完全自由化。いずれも、先の国会で、改革法案が成立しました。岩盤のように硬い規制を、私自身がドリルの刃になって、打ち抜いていく。安倍内閣の改革は、どんどん進んでいます」
 日本株を買ってきたウォール街の投資家たちが期待していたのは、首相が「これから何をやるか」。そう、具体的な次の一手を首相自身の口から聞きたかったのである。だが、安倍首相の演説にはそれに答える内容はまったくと言ってよいほど盛り込まれていなかった。そもそもそのはずで、盛り込もうにも盛り込む内容が今の安倍官邸の中にはなくなっているのだ。つまり「弾切れ」である。
 もちろん、これまで以上の「改革」を訴えるブレーンもいる。だが、16年7月の参議院議員選挙を控えて、敵を作る政策はとれない。比例区の割合が多い参院選は既得権を持っているさまざまな団体の影響力が強く働く。敵を作れば選挙で議席を減らす可能性が出てきかねないだけに、そうした既得権に切り込む改革は難しいのだ。

◆具体的政策ではない「新3本の矢」
 そんな中で出てきたのが「新3本の矢」だった。今後を「アベノミクスの第2ステージ」だとして、@希望を生み出す強い経済、A夢をつむぐ子育て支援、B安心につながる社会保障――を新しい3本の矢とし、これによって「1億総活躍社会」を目指すとしたのである。
 これまでの「3本の矢」は周知の通り、@大胆な金融緩和、A機動的な財政出動、B民間投資を喚起する成長戦略――の3つだった。「経済再生」がターゲットで、この3つの政策を同時に行うことで、それを実現するとしたのだ。
 ところが今回の「新3本の矢」は、矢自身が具体的な政策ではなく、実現するターゲットになってしまった。強い経済も子育て支援も社会保障も、具体的な政策というより、テーマ、あるいはターゲットである。誰にも異論ははさめない重要なテーマだ。とはいえ、その3つを実行すれば1億総活躍社会が実現できる、という構造にもなっていない。
 この「新3本の矢」に対する評価はさんざんだ。それぞれの矢で具体的に何をやるのか、さっぱり分からないうえ、加藤大臣が具体的に何を指揮するのかもまったく見えない。「強い経済」では、GDP(国内総生産)600兆円という目標を掲げ、「戦後最大の経済」と「戦後最大の国民生活の豊かさ」を実現するとしているが、今のGDP約500兆円をどうやって600兆円にするのか、肝心の具体的な方策がまったく見えてこない。
 さらに悪いことに、「新3本の矢」と言ったために、もともと掲げていた「3本の矢」はもう終わりなのかという疑念を生じた。マーケットには大胆な金融緩和がまだまだ不十分だとする人たちもいれば、公共投資の増額へ大型の補正予算を組むべきだとする人たちもいる。さらに、3本目の矢だった「構造改革」はまったく進んでいないと考えている人たちも少なくない。そういう人たち、つまりアベノミクスに一定の支持を与えてきた人たちに疑問を感じさせてしまったのである。
 ニューヨークの講演で安倍首相が「新3本の矢」を口にしなかったのはせめてもの救いだった。仮にキャッチフレーズだけの「新3本の矢」を海外の投資家の前で声高に語れば、間違えなくアベノミクスの信頼失墜につながったろう。
 「もう従来の3本の矢は諦めたのだ」と受け取られたに違いない。それぐらい「3本の矢」という単語自体がアベノミクスと表裏一体のものとして海外投資家には受け取られているのだ。
 そんなアベノミクスの息切れ状態に対して、海外投資家の対応は厳しい。東京証券取引所が発表している投資部門別売買状況(週次)によると、「海外投資家」は8月10日から10月2日まで8週連続で売り越したのである。

◆海外投資家の売り姿勢はアベノミクスへの失望
 海外投資家の日本株売りの主因は、中国の景気減速や、米国の金融政策の不透明感の強まりが日本株売りの主因には違いないが、アベノミクスへの不信感が強まっていることと無縁ではない。
 逆の言い方をすれば、上海株の下落以降、アジアの景気減速懸念が強まる中で、それを跳ね返して日本経済が成長する可能性を示すことができれば、日本株が大きく売られることはなかったに違いない。アベノミクスの軸がぶれず、日本経済の復活への期待が揺らいでいなかったとすれば、中国やアジアに投じられていた資金が、日本にシフトしてくる可能性は十分にあったからだ。そうならずに海外投資家の売り姿勢が鮮明になった背景には、彼らのアベノミクスに対する失望があると見ていい。
 安倍官邸の官僚の中には、アベノミクスの効果は早晩出始めると楽観視する向きもある。特に、雇用の増加傾向が続いていることがこうした楽観論の背景にある。だが、一方で、GDPの6割を支える消費は力強さに欠ける。雇用の増加や人手不足が賃金の上昇につながり、それが消費に向かうという好循環になかなか入らないのである。
 安倍首相が本当に「1にも、2にも、3にも、私にとって最大のチャレンジは、経済、経済、経済、であります」と言うのなら、海外投資家が基本を完全に見限る前に、もう一度、アベノミクスのエンジンをかけ直す必要がありそうだ。


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